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「辺境のオオカミ」イルカの指輪の系譜:その2

「辺境のオオカミ」イルカの指輪の系譜:その2





ローズマリ・サトクリフ作 / 猪熊 葉子訳
岩波書店 (2002.1)


主人公(指輪の継承者):アレクシオス・フラビウス・アクイラ
ドイツ、アブシーナ駐留のブリテン歩兵隊の二百人隊の次席百人隊長
→カルッテルム(クラモンドの架空のローマ名)の辺境守備隊の指揮官、二百人隊長
→アタコッティ辺境守備隊(ベルギカ)の初代司令官

伯父マリウス(母の腹違いの兄)は北ブリテン最高司令官で、アレクシオスの亡父の友。

物語の年代:343年ごろ

アレクシオスは亡き父から指輪を受け継いでいる。

イルカを彫った紋章指輪をはめた指を見つめていたのだ。それは傷のあるエメラルドの指輪だった。その古びた傷のある指輪は、長い年月を誇り高い軍人の先祖たちと過ごしてきたものだった。そしてそういう先祖たちを完全に失望させるようなことをしでかしてしまった今、自分にできることがあるとすれば、これ以上の辱めをこの任務についている間に部下たちに与えないことだった彫刻のある指輪は黒っぽく、秘密を隠していた。秋の空の冷たい表面を映しているだけだった。指輪は何も語りかけてはこなかった。p.28~29

アレクシオスは先祖について語る。

「多分はじめてブリテンに根を下ろしたローマ軍団につらなる先祖の血を受けているからでしょうな。その先祖はエトルリアからやって来ました。そのあたりの人間は痩せていて色黒です。でも彼が最高司令官の将校団のお坊ちゃんだったとは思いません。わたしにはブリテン人の祖母がいます。そしてわたしの乳母はイーリンの奴隷市からやって来ました。そしてこの二人はわたしが父の言葉を覚える前に、土地の言葉で歌を歌って聞かせたのです。」p.50

さらに注意しながら手紙を書き終えると、アレクシオスは木の板を二枚合わせ、赤い糸で結び、封をしてわきに置いた。印章のイルカの印が蝋のかたまりにくっきりとほこらしげに浮き出ていた。p.66

傷のある古いエメラルドの指輪は指にはまっていたが、ゆるゆるだった。注意しないと、なくしてしまうだろう。とにかくそれははめるべき指にはまっていなかった。だれからそれを彼のためにはめなおしたのだろう。
 見守っていると、指輪の石に日光があたった。そしてその石の奥に小さな緑の火花が散り、そして消えるとまた目覚めた。そして急に、カステッルムの道路を約一年半前に砦に向かって馬を進めていく途中でそうしたように、彼にその指輪を伝えてきた男たちのことを考えた。しかしそれは異なる種類の考えだった。
「わたしがあなた方の面目を失わせたとはいえませんよ、」アレクシオスは彼らに向かっていった。「まだ今のところはね。今わたしに何が起ころうとも、わたしの輝かしい陸軍の経歴はどれほど駄目になってしまうかも知れなくても、わたしは部隊を連れ帰ったのです。そうです、わたしたちはそれぞれを連れ帰りました。」p.298-299

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